有機分子性結晶を用いた気体分子の認識・貯蔵に関する研究です.構造有機化学,有機合成化学,有機結晶化学を基盤としています.

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軽元素で構成された有機分子性結晶の気体吸蔵特性とメカニズム解明

 気体分子を貯蔵する細孔性材料は,地球環境にまつわる問題だけでなく,エネルギーの分野にも貢献可能であることから,新たな材料の開発は重要な課題である.当研究室では,「軽い」ことを特徴とする純有機結晶を用いて単位重量当たりの貯蔵量を向上させるとともに,有機結晶中に気体分子を効率的に捕捉・貯蔵することを目的として,混成状態を柔軟に変化する窒素原子で芳香環のメタ位を連結した大環状かご形化合物(アザカリックスアレーン)に着目し,その合成法の開発と気体吸蔵材料への応用について研究を行っている.同分子系の中でも特に環状五量体については,その微粉末結晶が外部エネルギーの投入を必要としない常温・常圧下で二酸化炭素を迅速かつ選択的に吸蔵し,その吸蔵量は活性炭等を凌ぐことが明らかになっており,この研究成果は学術論文としてだけでなく,特許として出願済みである.現在,二酸化炭素だけでなく,クリーンエネルギー気体を標的として,気体分子を効率的に捕捉・貯蔵する有機結晶を探索するとともに,これに実現する材料設計指針の解明を行っている.


(キーワード:有機結晶・有機合成・結晶構造解析・分子認識・気体分子・貯蔵・環境・温室効果気体・クリーンエネルギー気体 )

[最近の主な論文: Org. Lett., 7, 2165-2168 (2005), Org. Lett., 8, 5991-5994 (2006), Chem. Lett., 36, 1374-1375 (2007), Chem. Commun., 2812-2814 (2008), Chem. Eur. J., 14, 6125-6134 (2008), Heterocycles, 76, 541-500 (2008), Heterocyclic Supramolecules I, 73-96 (2008)., J. Org. Chem., 73, 7748-7755 (2008), 有機合成化学協会誌, 67, 898 (2009), 特開2010-174002, Org. Lett., 13, 490-493 (2011), CrystEngComm, 14, 1021-1026 (2012).]

 


【左図】環状五量体の結晶構造.環状五量体の分子は,青と黄色のスティックモデルで示されている.また,緑色は,単位格子中に存在する空隙を表している.結晶中の空隙はそれぞれ孤立しているため,見かけ上,非多孔質な結晶である.【右図】環状五量体の微粉末結晶を用いた293 Kでの気体吸蔵実験の結果.窒素,酸素,アルゴン,および二酸化炭素の圧力変化は,それぞれ緑,黒,青,赤の線で示されている.初期圧は1気圧であり,二酸化炭素についてだけ急激な圧力減少が見られ,約10分で平衡に至る.環状五量体の微粉末結晶は,常温・常圧という温和な条件下で二酸化炭素を選択的に吸蔵し,その吸蔵量は活性炭やモレキュラーシーブを上回る(特許出願済み).

 

【左図】環状四量体の結晶構造.環状四量体の分子は,青と黄色のスティックモデルで示してある.また,緑色は,単位格子中に存在する空隙を表している.環状五量体の場合と同様に,結晶中の空隙は孤立しているため,見かけ上,非多孔質な結晶である.【右図】環状四量体のCO2吸蔵状態.結晶中に捕捉された二酸化炭素は,空間充填モデルで示されている.X線結晶構造解析により二酸化炭素の捕捉状態を原子レベルで明らかにし,次いで理論計算を行った結果,環状四量体が示す二酸化炭素の高選択的な認識にはCH/π相互作用と分子ふるい効果が重要な役割を担っていることが明らかとなった(この成果は,CrystEngComm誌でHot Articleに選定された).